ヒゲデザイン論
くちひげ(髭:mustache:ムスタッシュ)デザイン論

口ヒゲは顔の中心にあり、口の上にある部位になります。ゆえに「顔の表情」を印象づけます。 それは口ヒゲを生やしている人の「人格」をもデザインする事になります。ただ日本において は「ヒゲを生やす」と考えると、口ヒゲを生やし始める事を想像する人が多いのも事実です。

クチヒゲをデザインするということ。

ヒゲをいう字を漢字に変換した場合も「髭」という字が最初に変換されるように(思います・ ・笑)口ヒゲは「ヒゲ」という言葉から連想される部位といえます。しかし、冒頭に」述べたよ うに口ヒゲは「人格」を形成するデザイン的にも重要な場所なのです。ちなみに「顎ヒゲ」は「 顔の奥行き」、「頬ヒゲ」は「顔の高さ」を主に形成するデザインとなります。初めてヒゲを生 やす事を意識した場合に、口ヒゲから〜と思う方も多いのですが、ヒゲのプロである理容師とし ては「口ヒゲを生やすなら最後に生やす」事をお勧めするのが良いと思われます。「もみあげの 延長から始められる頬ヒゲ」「自然に生やし始められる顎ヒゲ」、そして周囲がヒゲを生やして いる事を認識されてからの「口ヒゲ」という事になります。

それでは口ヒゲにはどうしたら良いのか?・・まずはアウトラインをキチンと決めてから徐々に 長さを作っていけば良いと思うのです。また、口ヒゲに関してて大事なんもは「唇にヒゲがかか らない」という事。社会に通用するヒゲを意識する場合には、とても重要な事です。唇を隠すと いう事は「表情を隠す」という事になり、人を不安にさせます。もう一点は「口角(口の両脇・ 口元)を綺麗にみせる」という事です。口角つまり口元を綺麗にみせるか否かは口ヒゲのデザ イン上の大事な事です。先に述べましたが、口は「顔の表情」をつくり「人格」をも印象づけます。にやけた印象、怒っ ている印象、無表情な印象・・それら全て、口ヒゲから印象づけてしまう可能性があるデザインなのです。口ヒゲを生やす時は、デザインをしっかりと描いてから生やすことをお薦めします。


「基本的形状〜色彩(図1)」

口ヒゲの印象で、デザインと共に大きな意味合いをもつのが「色彩」です。標準的な黒色のヒゲ と白髪のヒゲなどの色彩も考えられますが、ここでは「色彩が濃い=ヒゲが長い/色彩が薄い= ヒゲが短い」という長さによる色彩変化とさせていただきます。まず冒頭で「口ヒゲは最後に生 やす」と申しましたが、その際にも「色彩」を変化させつつ伸ばしていくのが最良かと思われ ます。つまり「口ヒゲ」の存在感を色彩でコントロールするという事になります。デザイン的 には、まず1ミリから3ミリくらいの短いヒゲで口ヒゲはショートスタイルになります。図1で いうところの左図がそうです。そして、中央図はグラデーションスタイルです。これは、口角( 口元)の部位が1ミリ〜3ミリなのに対して、人中(鼻筋)付近の中央部になるにつれて長め になっていきます。ショートスタイルから伸ばす過程として、自然に顔に馴染ませて行く段階に なります。あまり口ヒゲを印象強くさせたくない場合は、この段階のデザインが最良かと思い ます。左右の口角付近が短いために、自然に顔に馴染むのためです。中央部は5ミリ〜10ミリ くらいが最適でしょう。刈り上げのようなグラデーションで長さをつないであげます。図1の右 図は、全体平均が10ミリを超えてきている状態です。色彩も濃いので、口ヒゲとしての印象が とても強くなっております。最終的な長さは、上唇が隠れないように切り揃えるデザインになり ます。上唇が少しでも隠れると、顔の表情を消してしまう為に、日々鋏などで切り揃えるなどの お手入れが大切になります。


「基本的形状〜横幅(図2)」

口ヒゲの横幅による、印象変化です。、図2の左側は口幅よりも短い長さの場合です。口ヒゲは 、顔の中心より下にある口ヒゲなので下方向への重心移動があります。口幅よりも短い場合は、 デザイン自体に動きが少なくなるために「静」の印象を与えます。鼻の幅程の短さになると、顔 全体の印象も「静」の印象を与え、厳格な人柄の印象を与えます。そのような印象が与えるた めに、社会的な地位などを連想させます。ゆえにそれがマイナスの印象となるような社会的立場 の場合は、避けた方が良いデザインかと思われます。中央図は、横幅が口幅と同じ場合です。一 般的にはこの長さが基礎的なデザインとなるでしょう。左右の緩やかな落ち込みから、下方向に 重心を下げていきます。口ヒゲ本来の重心移動となります。口幅の長さの端は、口角から垂直 0度〜斜め45度までが基礎的な口幅と考えます。左図は口幅よりも口ヒゲの横幅が長い場合 です。口幅よりも長くなる事により、口ヒゲ本来の下方向への重心移動よりも、横方向への広が りを印象づけます。図のように、口ヒゲの上部ラインがほぼ水平になっている場合は良いので すが、角度がある場合には「への字」がそのまま大きくなり、口角および頬を下に大きく下げて しまいます。その印象は年老いた印象になってしまいますので、注意が必要です。また、長めに すると口の動きと共に口ヒゲが動くために、顔の表情を豊かにします。ただし、オーバーな表現 方法になってしまうので、注意が必要です。


「基本的形状〜上部ライン(図3)」

口ヒゲの上部ラインの上下による印象変化です。口ヒゲは元々、下方向への重心移動があります 。そこからさらに上部ラインを下げる事により、重心を下に下げる事ができます。図3の左図は 標準的に、鼻の下ギリギリに上部ラインがひかれてます。顔の重心を下に下げる・・安定感を求 めるという意味での口ヒゲですが、基本的には鼻の下ギリギリが良いと思います。この基本的な ライン位置は、口ヒゲが一番太いデザインになります。ゆえに、口ヒゲの印象で唇の太さを細く 印象付ける事ができます。中央図は、上部ラインを少し下げた状態です。下げたぶんだけ、顔の 重心がさらに下がっております。「ヘの字」の角度がきつく目立ってしまう場合などには、上部 を剃り込んで頂点部分をとってしまいます。こうすることにより「ヘの字」の印象を和らげて、 口角(口元)を下げてしまうような印象を同じく和らげる事が可能になります。人中(鼻下から 上唇まで)の3分の1程迄が、ここのラインと考えます。右図は、上部ラインが人中から3分の 2程迄下げたラインになります。かなり顔の重心が下へ移動し、人中の長さが強調されたデザイ ンになります。顔の小さい方には良いかもしれませんが、細顔の方や、人中が長い方などにはお 勧めできないデザインになります。ヒゲの厚みは唇よりも薄くなる為に、唇が太く強調される印 象になります。中央図のようなヒゲだった方も、手入れの時についつい剃り込んでしまった状 態で、右図のようになる場合もあるのでお気をつけ下さい。


「基本的形状〜口角(口元)の長さ(図4)」

口ヒゲが口角(口元)からの長さによる印象変化です。図4の左図は口角よりも短く、上方向に 切れ込んでいるデザインになります。口角よりも上に口ヒゲの下部ラインがひかれるので、顎を 上に引き上げる印象になります。ただし、顎が長い人の場合などは強調してしまいますので注意 をしてください。口角周辺にヒゲがないので、食事の際などにヒゲが汚れる事が避けられるデザ インになります。色彩的には、両端から中央へのグラデーションをいれてあげると、顎の印象を 和らげつつ、口角周辺を清潔にする事ができます。中央図は、口角と同じ長さの基本的なデザイ ンになります。口角より上45度の角度までが、この同じ長さという事になります。45度の角 度を漬ける事により口角周りの清潔さを維持しつつ、口元の位置の変化も少ないデザインです。 右図は、口角よりも口ヒゲが長くなっている場合になります。比較的、街で多く見かけられるデ ザインになります。口角を隠してしまうので、口角が下にさがったような印象になります。ゆえ に口元が揺るんだ印象になりますので注意が必要です。また食事の際には、どうしても口ヒゲの 両端が、汚れやすくなるので極力避けたほうが良いデザインです。


「基本的形状〜口角(口元)の長基本的形状〜両端ライン変化(図5)」

耳前部〜顎下部〜顎までのラインのうち、顎下部の位置を前方にづらしたアウトラインになり ます。耳前部から顎下部のラインが前方に描かれるために、顔の厚みが感じられないイメージ になっております。一般的に正面から鏡を観ながら鬚をデザインしている為に、意識せずにデザ インされいる場合があります。顔の奥行きが西洋人に比べてないアジア系の顔つきの場合には、 余計に顔の奥行きの無さを助長してしまいます。また顎も細くなってしまうイメージになる為に 、注意が必要です。お客様がこのようなデザインで来店された場合は、その印象を正確に伝える 事が大切になります。その上で標準的なデザインに近づける為、耳前部〜顎下部〜顎までのライ ンを一旦剃り落します。それが無理な場合は、数回の施術に分けて少しずつ外側にラインを移動 していく事を提案すると良いかと思われます。


「基本的形状〜両端形状変化(図6)」

耳前部〜顎下部〜顎までのラインにおいて、顎下部にかけて細くなるデザインです。耳前部から 顎下部にかけて細くなり、顎下部から顎にかけて太くなっています。顎下部の部位が細くなって いるために、顎下部が強調されたデザインになっております。細くするデザインはシャープさと 精悍さを印象づけますが、このようなデザインはそれと共に部位を強調させます。顎下部が強調 されるという事は、顔の奥行きが強調されるデザインでもあります。顔の奥行きがないアジア系 人種の場合は有効なデザインでありまが、エラが張った角顔の方の場合は避けた方がよいと思わ れます。また、頬髯が耳前部から顎下部にかけて細くなっているので、面長に印象づける効果も ありますので、耳前部から顎下部まで長さがある方の場合はデザイン的な注意が必要となります 。